医療に関する豆知識

 

【2009/02/13】クラミジア感染症と腹痛

院長 小林 壮光

クラミジア感染症は、性感染症のひとつで、本来は婦人科で扱われる疾患です。しかし、かなり激しい上腹部痛をきたすことがあり、その際ほとんどが内科を受診し、胆のう炎、胆石症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などが疑われて検査がすすめられます。
このような上腹部痛をきたすクラミジア感染症は、その発見者の名をとってフィッツ・ヒュー・カーティス症候群と呼ばれ、内科で治療されることが多くなっています。

クラミジア感染症

最近、保健衛生担当者の方々による性感染症予防の啓蒙・指導活動がすすめられており、若い女性を主体に急速に拡大していた性器クラミジアの罹患率は、2003年から徐々に下降し始めています。しかしこの傾向を年齢別にみると、10歳代後半ではかなり減少傾向にあるものの、20歳代になると前半、後半ともにわずかの減少にとどまっています。また、男性の罹患率は女性の1/2 以下でほとんど症状がみられませんが、感染源となり得るため、今後さらなる広範な啓蒙・指導の必要のあることが示唆されています。

フィッツ・ヒュー・カーティス症候群

性感染したクラミジアが卵管経由で腹腔内に入り、肝臓周囲に定着して上腹部痛をきたす疾患です。肝臓表面で激しい炎症を生じ、肝臓表面と腹壁の間にアメのようなヒモが形成されることがあります。このヒモはその形態からバイオリン・ストリング(バイオリンの弦)と呼ばれ、内視鏡(腹腔鏡)で観察されます。
血液検査によるクラミジア感染の確認が診断の手がかりになります。最近では腹腔鏡にかわって、苦痛を伴わない腹部CT検査による肝臓表面の観察が試みられています。
クラミジア感染症の治療はさほど困難ではなく、有効な抗菌剤を投与するのみで治療効果が期待できます。
いずれにしても正確な診断と、それに基づく治療が必要となります。ご心配な方は一度受診してみて下さい。