副院長 淡川 照仁
ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)の持続感染は慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、さらには胃癌や胃MALT(マルト)リンパ腫などの発症の一因と考えられています。 |
試験方法 | 検体 | 長所 | 短所 | 除菌前 | 除菌後 | |
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胃内視鏡検査を 使わない検査方法 |
(1)尿素呼気試験 | 呼気 | 感度・特異性が共に高く迅速(約30分間) | 特になし | ◎ | ◎ |
(2)血中抗体測定法 | 血液 | 簡便 | 既感染を認識するため除菌判定には向かない | ◎ | × | |
(3)尿中抗体測定法 | 尿 | 簡便 | 同上 | ◎ | × | |
(4)便中抗原測定法 | 便 | 簡便 | 特になし | ◎ | ◎ | |
胃内視鏡検査を 使う検査方法 |
(5)迅速ウレアーゼ試験 | 胃粘膜 | 迅速 (1~2時間) |
偽陰性の可能性がある | ◎ | × |
(6)鏡検法 | 胃粘膜 | 同時に組織診断が可能 | 同上 | ○ | × | |
(7)培養法 | 胃粘膜 | 特異性が高い | 同上 | ○ | × |
(◎)推奨される検査方法
(○)陰性だった場合には他の方法での再検査が勧められる検査方法
(×)除菌判定には推奨されない検査方法
※ 除菌後の判定は偽陰性を防ぐために除菌終了後4週間以上経過してから行います。
内視鏡を使わない検査方法(面診断)には(1)尿素呼気試験、(2)血中抗体測定法、(3)尿中抗体測定法、(4)便中抗原測定法があります。検体として呼気や血液・尿・便を用いるため、点診断のようなピロリ菌の不在部分で検査をしてしまうことがありません。
(1)尿素呼気試験は試験薬内服前後の呼気を用いてピロリ菌の存在を診断します。感度・特異度(陽性・陰性であった場合の信頼性)が共に高く、全過程約30分で検査結果が出ます。結果は数値で表記されるため判定は客観性に優れ、存在診断のみならず除菌判定にも有効です。
(2)血中抗体測定法・(3)尿中抗体測定法は検診などのスクリーニングにも用いられ、除菌治療前の存在診断に有効です。
(4)便中抗原測定法は改良により感度・特異度共に優れた感染診断法となり、尿素呼気試験と同等の正確さが示され除菌判定にも有用です。
内視鏡を使う検査方法(点診断)には(5)迅速ウレアーゼ試験、(6)鏡検法、(7)培養法があります。何れも鉗子を用いて胃粘膜組織の一部を採取します。採取(生検)した胃の切片で検査を行うため、採取した部分にピロリ菌が存在しないと陰性(偽陰性)となります。
(5)迅速ウレアーゼ試験は判定時間が短く、除菌治療前の存在診断に有効です。
(6)鏡検法は病理組織診断も合わせて行うことが可能です。
(7)培養法は陽性の場合には存在の信頼性が最も高いものの陽性率が低いのが欠点です。
ピロリ菌の検査は保険適応となっていますが、適応疾患は胃・十二指腸潰瘍、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎、胃MALT(マルト)リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌の内視鏡治療後の患者さんです。
除菌治療前の感染診断には(1)尿素呼気試験、(2)血中抗体測定法、(3)尿中抗体測定法、(4)便中抗体測定法、(5)迅速ウレアーゼ試験、(6)検鏡法、(7)培養法のうち1項目を施行することができます。ただし、1回目の検査が陰性であった場合はさらにもう1項目を追加施行することができます.また、初回実施に限っては(1)と(2)、(1)と(3)、(1)と(4)、(2)と(4)、(3)と(4)、(5)と(6)の組み合わせから1つを実施することが認められています。
除菌治療後の治療判定には除菌前と同様に、保険適応となっているのは(1)~(7)のうちの1項目ですが、検査の結果が陰性であった場合はさらにもう1項目を追加実施することができます。また、初回実施に限っては(1)、(2)、(3)、(4)のうちの2つの検査を同時に実施することが認められています。
ピロリ菌の除菌治療前および除菌治療後の何れにも有効な尿素呼気試験は胃粘膜の一部を材料として用いる診断方法(点診断)とは異なり、胃粘膜全体のピロリ菌の存在を診断(面診断)する方法です。
尿素呼気試験の方法は、(1)始めに呼気を採取します。(2)試験薬(錠剤)を約100mlの水で服用します。(3)約20分間安静にしてお待ちいただきます。(4)再度呼気を採取し、測定器に試験薬内服前後の呼気袋を取り付けます。(5)約5分間で結果が判定され、全過程は約30分間で終了します。
当院では尿素呼気試験を用いたピロリ菌の存在診断と除菌判定を行っております。
消化性潰瘍を繰り返す方でピロリ菌の存在診断をされていない方、除菌治療を施行されたものの除菌判定が未だなされていない方など尿素呼気試験は食事をせずに来院いただけければ来院当日に検査が可能です。お気軽にご相談下さい。