医療に関する豆知識

 

【2008/05/16】習慣性便秘について

院長 小林 壮光

便秘とは、「(1)排便が困難となり,且つ(2)これに基づく自覚症状を有する状態」と定義されます。排便の周期は人それぞれですが、明らかに普段よりも周期が長く、腹部の張った感じなど、何らかの自覚症状を伴っている場合に便秘といわれます。
便秘は「症候性便秘」と「習慣性便秘」に大別されます。症候性便秘は、大腸癌や大腸の炎症性狭窄(きょうさく)などといった疾患が原因となっており、この疾患に対する治療が必要となります。
これに対して習慣性便秘は、その原因に生活習慣が大きく関与するとされており、予防のためには病態の理解と日常生活上の工夫が必要となります。

(1)習慣性便秘の病態

習慣性便秘は、弛緩(しかん)性便秘、けいれん性便秘、および直腸性便秘に分類されます。便は腸のしごくような収縮運動すなわち蠕動(ぜんどう)運動によって大腸内を移動し、直腸を通って肛門より排出されます。弛緩性便秘は、大腸の蠕動運動が弱くなることにより生じ、規則的な排便習慣がなく便を溜めておく癖のある人に多くみられます。けいれん性便秘はこれと逆に大腸の収縮運動が強すぎるためにスムースな便の移動が妨げられて排便がない状態で、ストレスの関与も大きいとされています。また、直腸性便秘は直腸に便が達しても便意が起きず排便運動が生じない状態で、便意があるのに排便を我慢する人や、高齢で排便反射が低下している場合にみられます。
これら習慣性便秘の人の腹部CT像では、大腸内に多量の便の蓄積が確認されます。

(2)習慣性便秘の予防

便意を我慢しないことと、規則的な排便とくに朝食後の排便を習慣づけることが必要です。夜間に安静が保たれていた腸管は、朝食により刺激された胃・十二指腸粘膜からの信号を受けて運動が活発となり、便意を生じやすくなります。規則正しい生活のためにも、朝食を摂るようにしましょう。
食事内容に対する配慮も必要です。弛緩性便秘では消化吸収されにくく腸管を刺激する食物繊維を摂取することが大切です。十分量を摂取するためには、加熱などの調理も有効です。一方、けいれん性便秘では食物繊維を摂り過ぎないようにする必要があります。消化が良く、腸に与える刺激が少ない物を食べるように心がけましょう。いずれにしても病態に応じた食生活の改善が必要です。
また、腹筋が弱いと排便に要する腹圧も低下してしまいます。大腸の蠕動運動を誘発するためにも適度の運動を行うと良いでしょう。 便秘でお悩みの方は、その病態を正しく把握するためにも、気軽に受診して下さい。